分譲住宅(マンション)の耐震化を促進しようと、国土交通省は耐震診断・改修の進め方、合意形成の手法などを分かりやすく解説するマニュアルをまとめた。比較的大規模な改修で検討すべき課題や発生しがちな問題点などを網羅。管理組合や設計者、施工者の役割も明確化している。
全国に500万戸以上あるマンションストックのうち、約100万戸は1981年以前に建てられたいわゆる「旧耐震基準」に区分され、その多くが耐震性に不安を抱えている。
同省は2004年に「改修によるマンション再生手法に関するマニュアル」(マンション再生マニュアル)を策定し、耐震改修を含めた再生手法を示すとともに、05年に耐震改修促進法の改正、耐震改修補助制度や税制の見直しなどを行い、耐震化の促進を図ってきた。
一方で、耐震性の低いマンションを現行の耐震基準に見合った性能に引き上げるには多額の費用が必要となる。耐震改修には原則として区分所有者の4分の3以上の決議が求められることと相まって、マンションの本格的な耐震改修はほとんど進んでいないのが実情だ。
今回の「マンション耐震化マニュアル」はこうした状況を打開するため、有識者らで構成する「分譲マンション耐震化マニュアル策定検討委員会」(座長・戎正晴弁護士)が中心となってまとめた。地震に弱いマンションの状況と大地震等による被害想定マンションの耐震診断マンションの耐震化手法の検討マンションの耐震改修支援制度―の全5章で構成している。
第1章では地震に弱いマンションとして、ピロティ形式のマンションやL字型・コの字型のマンションを例示。内外壁の仕上材、給水装置、配管、電気設備といった構造以外の耐震対策も示した。第2章では、耐震診断の流れをフロー図などで解説。耐震診断の依頼に当たっては、構造設計ができる一級建築士の設計事務所など耐震診断のノウハウを持った専門家を選定するよう呼び掛けた。
第3章では耐震化の検討に当たり、区分所有者らへのアンケート調査を行うなど、合意形成手法を提示。施工者選定に当たっては、手続きの透明性・公開性を確保することが重要とした。第4章では、耐震改修計画、資金調達、施工に当たっての留意点を説明するとともに、耐震改修工法の選択肢を具体的に示した。区分所有者の個別事情を把握することや非賛成者への対応を適正に進めていくことをポイントとして挙げた。
第5章と別添では、耐震診断・改修にかかわる資格者の情報や各種補助制度の概要を解説している。
<建通新聞社・東京編集局>
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