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税理士 菊池 康之

【008】
親族間の売買

 不動産・株式などを取得した場合、税務署からおたずねが来る場合があります。今回は、親族間の売買についてとりあげてみました。

<親族間の売買>

私は兄との間に、土地の売買を行いました。親族間の売買はよく問題になると聞きますが、税法上なにか問題があるのでしょうか。
事実が売買取引であり、時価相当額(評価額ではありません)であれば、とくに税法上問題にされることはありません。土地を譲渡した人が所得税の申告をすれば、それですみます。

1 親族間売買の留意点

 親子、夫婦、兄弟などの親族間で、実際は贈与であるものを売買ということにして不動産の名義を変更する例がよくあります。
 このような場合には、金銭の貸借などと同様、第三者との間の取引では通常ありえない条件によっていることがあります。特殊な関係者の間で、対価を支払って取引しても、一応は仮装譲渡の疑いが濃いとして、税務署が実質を調査することがよくあります。
 そこで、親族間で売買を行う場合には、

[ 1 ] 売買をすることになった事情
[ 2 ] 売買価額決定の経過と売買価額の多寡
[ 3 ] 資金の調達方法、蓄積の過程、支払い方法(小切手・銀行振り込み)、借入金調達の具体策
[ 4 ] 売った人の譲渡代金の受領から現在までの資金の動き

 などを税務署に詳しく説明できるだけの準備が必要です。
 「親族間ではなく、第三者との売買ならどういう条件で・・・」という点をよく考えて、どの点を調査されても問題とされないようにしておく必要があるでしょう。

2 低額売買

 親族間の不動産売買が事実行われたとしても、親族間であるがため取引価額を自由に決定できますので、通常の取引価額(時価)より低い額で取引する場合があります。これらの低額売買について、贈与により取得したとみなされる金額は次の通りです。

[ 1 ] 土地または建物などに係る場合
通常の取引価格に相当する金額と実際に支払った対価額との差額
[ 2 ] 上場株式、気配相場などのある株式に係る場合
 課税時期の取引価額(最終価格)と実際に支払った対価額との差額
[ 3 ] (1)(2)以外の財産に係る場合
財産評価基本通達による評価額と実際に支払った対価額との差額

*関連税法 相続税法7条、9条、平成元年直評5、財産評価基本通達169、174

つづく

税理士 菊池 康之

 

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