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[No.041] 新潟中越地震〜視察を通しての考察<その3>〜 若山 誠治 (若山建築事務所 一級建築士事務所 雨楽) |
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前回は柔軟に地震力と付き合った実例をあげた。いろいろと説明不足なのはご容赦ください。 ■耐震補強の限界■ 良く分からないまま、だから丈夫に作るしか無い訳で、今回の中越の地震でも新幹線の橋脚部分が破壊されましたが、あれは阪神大震災以降、それまでの安全基準では不十分だという事が明らかになったので、大幅な見直しがおこなわれ、補強工事があちこちで行われたのですが、ここは大丈夫だからと耐震補強がなされなかった所なのです。そこが壊れてしまった。だからまた安全基準は見直されなければならなくなってしまったんでしょうね。 新潟の新聞に書いてありました。安全基準を満たしているからといって絶対安全は有り得ない。最後は人間の感に頼るしかない。だから身を守るためには、危険を感じる本能的な部分を呼び覚ます必要がある、とか。まあ、あまり建築には関係ないかも知れませんが。強いて言えば、構造的数値はもちろん大切だが、構造的感性を磨く事も更に大切だという事か。 阪神大震災が818ガル、その被害の甚大さから耐震基準が見直され、建築の現場でも大きな変化があった。今建てられている建物は格段に耐震性能は高まっている。しかし今回の中越地震の加速度は、十日町で1750ガル、小千谷で1500ガル、川口町で2515ガルと新聞紙上で報道されている。想定外の地震力は起こり得る。 ■ホールダウン金物がちぎれた■ 激震ゾーンが報道されている。川口町の田麦山から堀ノ内にかけた幅500m、長さ6kmの範囲。建物の9割が大破倒壊した。コンクリートで高床にした雪国仕様の、今回の地震でも強かったといわれた建物も損壊がみられた。 ここに建つ耐震的配慮がかなり行われた建物を紹介する。
■なぜホールダウン金物がちぎれたのか■ そもそも伝統的な木造の建物には、柱に引き抜きの力はかかりにくかった。柔軟な構造物には、横から力がかかる事によって発生する引き抜きの力はごく僅かだった。木造建築は耐震という視点から補強されるようになって、どんどん硬く頑丈になり、その結果柱が引き抜かれるという現象が起きるようになった。 また、硬く丈夫な建物は地震力を増幅することが知られている。地面からの地震力は建物の中で増幅され、地面の揺れよりも建物の揺れの方が大きくなるという現象がおきる。 たぶん、この建築技術者たちは、地震で壊れてはいけないと、がちがちに強く硬い家を造ってしまったんでしょう。 大きな音がしたでしょうね。高校生の時、ラウンドバーの引っ張り破壊試験をした事が有ります。 耐震建築には限界が有るという事は知っておいていいと思う。強さだけを追求すると思わぬ落とし穴が有るという事か。 建築はバランスです。構造的にも経済的にもバランスのとれたしなやかな建物を建てて、大きな地震力もさらりとかわすのがいいね。 次回は、擁壁が崩れる時、をレポートします。
04.12.04 由比 青の家にて 若山誠治
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