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[No.032] 衛生的な食品工場の環境づくり 福島 昭夫(青島冷凍工業株式会社) |
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販売先スーパーやフードサービス企業が、食品メーカーに対して、「HACCPを導入してもらい、安全な製品を供給する体制を整えて欲しい」ということを通達していることもあり、HACCPに取り組むところが急速に増えている。また、そのメーカーに下請け、協力工場があれば、当然そこに対してもHACCPを要求する。このようにしてHACCPは、それぞれの企業にとって、突然に必要性がでてきて慌ててスタートする事態が起こっている。 HACCP承認制度対象外食品工場でも今まで以上に衛生的環境での製品づくりが要求されるため、工場の環境見直し設備改修が急ピッチで行われている。さらに、今回発生の「雪印事件」は食品製造業界に与えた影響は計り知れなく、現状の見直し、管理のあり方などを含め、様々な動きが活発化すると考えられる。 「雪印事件」以降、消費者が異物混入に対し非常にシビアになり、厳しい姿勢で臨むようになったことで、食品苦情から回収にいたるケースが激増、その数は6〜8月で120件(前年の6倍)と圧倒的に増加している。 今までなら「大したことはない」が「えらいことになる」、「何とかなるさ」が「なんともならない」、「よくあること」は「あってはならない」時代になり、クレーム対応が従前以上に重要になっている。 異物混入防止のためには、防虫カーテンの設置、室内を陽圧構造に維持する等の設備が必要だが、その前に、虫が入ったらどうなるのかを教え、ハエなどの発生を抑えるルール、虫の入らないようにする個人行動、虫の発生しない取扱いなどが出来てはじめて、専門業者と総合的な対策をとることが必要だ。 防虫設備をせっかく高いコストをかけ設置しても、設備そのものの欠陥も見つかる。室の中が負圧になって、外から虫を引き込んでしまう構造だったり、空調機や大型食品機械の天井部からの異物混入危害を発見することが多い。また、古い空調機の吹き出し口からゴミが排出され、その先でパッケージ作業をやっているところがあったりする。 食品工場の「換気」の悪い例として、スチーム処理や、機械放熱、洗浄散布水や粉塵の排出のために大型の排風機を設置したことでダーティな要素は取り除かれたと錯覚しているケースがある。排気に見合った給気、必要なフィルター設備がないため、結果室内が負圧(マイナス圧)になり、虫・粉塵が侵入、又夏季や中間季には雑菌・水分が大量に入り込み、劣悪な環境が再生産され、すべての作業室が汚染される。 衛生的な環境に整える際の考え方として、洗浄度によって工場内を区分けするための隔壁、清浄な空気の供給装置、原料搬入から出荷までに過程が交差しない配置。このように「ゾーニング」「空気の供給」「動線」の3原則を守ることで衛生的な施設ができるが、特に工場内の気圧には注意を払いたい。
「クリーンルーム」は塵埃・菌を持ち込まない、発生させない、溜めない、除去することができる機能を持った衛生的な室で、食品が常温状態で裸品となる充填工程や包装工程、冷却、計量の工程を中心に設けられ、殺菌により品質が低下する食品や殺菌が不可能な食品加工の室にも用いられるが、製造にあたり、予測される危害を十分分析し、その必要性も含めて、どこにどの程度のクリーンルームを設置すればよいか検討することが大切だ。 いずれにしても、HACCP対応の工場をつくる場合も、クリーンルームを新設する場合でも、まず「一般的衛生管理」を徹底して始めて、次のステップに向かうことを忘れないことだ。 |