建てたい人と建てる会社の『建築ナビ』

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[No.030]
「インテリア」−快適な住まいづくりのためのチェックポイント−
大塩 ひとみ
 (杉山デザイン室一級建築士事務所)(静岡県インテリアコーディネーター協会理事)

 "家を建てること"はほとんどの人にとって一生に一度あるかないかの大事業です。
 資金の事や土地の事、その他いろいろな問題をクリアしてさあ建てようという時、いちばん夢が拡がりまた身近に感じられるのが、インテリアではないでしょうか。
 「インテリア」とは「エクステリア=屋外」に対する「屋内」の意味になりますが、住まいの場合、現実としての生活を行うところであり、また毎日目にし、耳にし、体に触れ、匂いを感じるところでもあります。せっかく建てるのですからオーダーメイドの(あるいはイメージオーダーであっても)だれのためでもない自分の、自分達家族のための快適な住まいづくりを目指したいものです。

 では快適な住まいとは何でしょうか? その条件を考える時、機能的な面と心理的な面のふたつに分けてみるとわかりやすくなります。
 まず機能的な面、これは「住みやすさ」のことですが、インテリア計画はできるだけはやく始めた方が効果的です。「平面プラン(間取り図)を見せられても全然わからないから…」と言ってしまわないで、設計担当者に壁やドア、窓、部屋の広さを教えてもらって下さい。そうしたら自分の朝起きてから夜寝るまでの(寝る時のスタイルも)思いだしてみて下さい。
 主婦として朝何時頃起きますか? その時ご主人はまだ隣でお寝みですか? まず顔を洗いますか? 着替えは、化粧は、いつどこでしますか? 子供達はいつ頃起きてきますか? 朝食はみんなそろって食べますか?…といったように事細かに自分の、家族全員の一日の生活パターンを整理してみます。そして新しい家ではどんな生活をしたいのかという希望も合わせて想い描きながら、平面プランの上を指で追ってみます。そうすることで自ずと部屋と部屋との関係や、収納がどこにどれくらい必要かなど、具体的にわかりますから意識してチェックする事ができます。
 人の暮らし方は十人十色です。そのひと、そのひとの考え方や習慣によって違うものですから既成の考えにとらわれる必要はありません。できた家に自分を合わせるのではなく、自分に合わせた住まいづくりをしましょう。
 さらに同じ縮尺にして家具を紙で切り抜いて置いてみると必要な部屋の広さ、ドアの位置や開く方向、窓との関係、T.V.の場所なども一緒にチェックできます。但、家具は(収納もそうですが)使うためのスペースも合わせて考えることを忘れないで下さい。引出を引いた時人が後ろに逃げられない、ダイニングチェア―に座ったら後ろが通れない、後ろの食器棚の扉が開けられないでは快適な住まいとはいえません。

 間取りの出たり引っ込んだりは即、外観デザインにつながりますし、構造的に可能、不可能もあります。窓の大きさは風通しや採光・法規にひっかかります。もちろん予算もありますし、お隣との関係もあります。ですから「インテリア」からのアプローチだけで平面プランを決めることはできませんが、快適な住まいづくりのための重要なチェックポイントであることは確かです。

 次に心理的な面、これは「住みごこち」のことです。インテリアはトータルの美しさであり調和と統一が大切です。どんなに一点一点が美しく高価なものであってもスタイルが合わなかったり、バランスが悪かったり、色がバラバラでは快適とはいえません。単品で、あれやこれというのではなく、常に全体を考えながら決めていくのですが、失敗しないためには選択のための物差しとしてイメージを最初に決めておく事が大切です。
 インテリアイメージは家具、照明器具、ウィンドートリートメント(カーテンなど)内装仕上材、建具などのスタイルと、色や材質がかもしだす雰囲気で表現されます。
 イメージを決めるにはクラシック、モダン、エレガント、カジュアル、和風、シンプル、ナチュラルなどと好みのスタイルを思い浮かべてみることから始めます。インテリアやファッション関連の雑誌から気に入った部屋や家具、カーテン、小物などを切り抜いてみるとより具体的なかたちになってみえてくるはずです。インテリアの好みは様々で、年齢や環境によっても変わります。またライフスタイルや社会的ステータスともかかわってきます。理想のスタイルそのままとはいかないかもしれませんが、住みこなせる範囲の中で(住みこなしていこうという希望も含めて)一時の流行に振りまわされることなく自分に、家族にとって最適なインテリアイメージを決めましょう。
 こうして物差しが決まったらそれに基づいて選んでいきます。その順序は工事の流れからいえば床、壁、天井の仕上材を決めて、照明器具を決めて、家具、カーテン…となるのでしょうが、影響の大きい重要なものから、また後で選べる物がなくて困ってしまわないように、選択の幅の少ないものから始めた方がよいでしょう。例えばリビングの場合、張地の限られるソファーから選んでいくとまとまりやすくなります。もちろん工程に支障のないように先行して決めていかなければなりません。
 また思い出がいっぱいつまった家具や調度品を使いたいとか、○○の絵を飾りたいなどという場合は、最初に物差しの目盛りをその家具や絵に合わせてから他の物をコーディネートしていくという手法もあります。そうすることでそれを際だたせたり、新たに活かしていく事も可能になります。
 但、どの場合でも、個々の物がどんなに優れていて気に入ったとしても物差しから外れていないか、また一部屋全体、そして家全体として調和がとれているか必ずチェックすることがポイントです。

 住まいのインテリアを考えることはとても楽しいことです。仕上材や壁紙の色やパターン、照明器具の形や光の使い方、家具やウィンドートリートメントなどで一つの空間を自由につくりあげていけるからです。せっかくのチャンスですから(プロに依頼する場合でも人まかせにしてしまわないで)ぜひ楽しんでいただきたいと思います。