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[No.014]
木造住宅の耐震化に弾み
「TOUKAI(東海・倒壊)―0(ゼロ)」プロジェクト

 静岡県内の市町村では、木造住宅の耐震化を強力に推し進める取り組みを本年度から始めました。住宅耐震化プロジェクト「TOUKAI(東海・倒壊)−0(ゼロ)」がそれです。
 木造住宅の耐震診断への助成は従来からありましたが、補助を受けてもなお、5万円程度の自己負担がかかるなどから、なかなか診断が進んでいませんでした。今回は、自己診断の診断票が今までのものより簡単にできるようになったほか、自己診断で専門家の診断が必要となった住宅については、自己負担なしで専門家の診断が受けられるようになります。そこで、プロジェクトの内容やポイントを、静岡県都市住宅部建築安全推進室の椿邦彦技監に聞いてみました。
(月刊建設DATA・7月号より抜粋)


 「TOUKAI(東海・倒壊)−0(ゼロ)」のネーミングは、東海地震が発生した時に、「倒壊する家をゼロにしましょう」という意味ではなく、「家の倒壊による死者をゼロにする」ことを意味しています。
 阪神淡路大震災での死者が約6400人。このうちの約8割が建物の倒壊で死亡しました。「死ぬっていうのは瞬間なんですね。阪神淡路大震災の場合、建物の倒壊で亡くなった方のほとんどが10分以内の即死状態だと言われています。救助隊などはまず間に合わないそうです」。
 また、椿技監はこうも話す。よく聞く話に「地震が来る前に家を建て替えると、新しい家に被害が出てしまうからもったいない。だから、地震が来た後に家を建て替える」という人がいるが、「これは大きな間違い。倒壊の恐れのある家が地震で壊れてから新築すると考えている人は、家が壊れた時でも自分だけは助かると思っている方。自分は助かっても家族全員が助かるかは、まったく分かりません。ぜひ地震が来る前に安全な家にしてほしい」と椿技監は訴える。
 プロジェクトでは、昭和56年5月以前の木造住宅の簡易耐震診断を実施していく。対象となる家の数は静岡県内に約60万棟。なぜ、昭和56年5月以前かというと、この年に建築基準法が改正され耐震基準が新しくなり強化されたため。
 具体的には、壁や筋交いをたくさん入れなさいということになっています。改正前の建物は、想定される東海地震の揺れに耐えられないものが多いというわけです。


 プロジェクトの内容は、まず、各家庭で書き込むことで診断結果が分かる「わが家の耐震診断・調査票」によって、簡易診断を実施します。調査票も以前のものよりも、「ずっと分かりやすく、書き込みやすくしてあります」。その結果が「安全」となった家以外の世帯は、希望することにより無料(住民負担なし)で、より詳しい診断や補強策などの相談を専門家から受けることができます。
 高齢者や障害者で調査票に書き込みが少し大変といった人には、「昭和56年以前に建築されたことと、1戸建てであることなどが確認できれば、調査票にすべて記入しなくても専門家を派遣します」というように依頼しやすいものとなっています。
 「わが家の専門家診断」は、耐震診断の調査票に自分で書き込んで結果を出した後に、専門家が行ってより精密な診断とアドバイスをするもの。県では、2001年度から2003年度までに約20万棟(2001年度は約3万棟)の専門家診断を行う計画です。


 「TOUKAI(東海・倒壊)−0(ゼロ)」のもう1つのポイントは、低廉で簡便な耐震補強工法と防災グッズのアイデアを全国から募集していること。ことし4月から募集を始めており、9月15日まで受け付けています。工法を集め、補強相談の時にメニューとして相談者に提供していきます。
 「壊れますと言われた家を、”安全”まで強度を高めるのか、場合によっては”傾くが倒壊しない”程度の補強で良しとするのかで、工法やかかる費用も違ってきます。安全と言われる強度を持つまで補強しなくても、少しは傾くが倒れない程度までの補強とする工法もあります」。
 補強工法の情報提供としては、インターネットのホームページを開設することも考えています。「静岡県住宅耐震補強ITナビゲーション」を2001年度中に開設して、常に工法などを集めるとともに、インターネットから診断や工法などの情報を見ることができるようになります。