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[No.013]
ピッキングから、わが家を守るには…
(静岡ビジネスレポート7月15日号より)

[ ピッキング ]
 …特殊な工具を使い、シリンダー錠をいとも簡単に数十秒で開け侵入、現金・カード・有価証券・貴金属はもちろんのこと、大胆にも家財道具までも盗み出してしまう。

 日本は安全! 私の家は大丈夫!と、防犯意識は薄いのではないでしょうか。ドアのデザインやカラーリングにこだわるだけで、家の入り口を守る『カギ』については、まだまだ関心が低いのではないでしょうか。ピッキングには特殊な工具が使われますが、この工具にしても今ではインターネット上で数万円も出せば、だれでも簡単に手に入ってしまうことも被害の増大につながっています。
 アパート、マンションなどの集合住宅では、チャイムを鳴らし「留守」を確認してから犯行に及ぶケースも多発しています。特に最近ではグループ化が目立ち、見張り役や逃走経路をあらかじめ確保しておくなど組織的になってきています。経済、社会のグローバル化、技術の進歩は犯罪にも多大な影響を示し、被害は拡大傾向にあります。
 では、ピッキング被害を防ぐ対策としてはどんな方法があるのでしょうか。

 1つのドアに2つのカギを取り付ける「ワンドア・ツーロック」や、既存の錠前のシリンダー交換などはセキュリティーを高め、犯罪の未然防止に効果を示しています。
 「ワンドア・ツーロック」は、ドアにカギ穴が2つ付いているので、開錠に倍の時間がかかり、2つめのカギは主錠と離れた位置に取り付けられるため、開けるのには不自然な姿勢となり人目につきやすくなるという物理的な抑制効果があります。また、防犯意識の高い家だということを2つのカギでアピールできるため、心理的に侵入しにくくさせます。
 しかし、近隣の住宅がリスクを負うことにもつながります。近隣が「ワンドア・ツーロック」にした場合、ワンロックである家の狙われるケースが高くなってしまうとも言えます。
 シリンダー交換は、多発してきたピッキング被害にメーカーが技術開発を行い、開錠されにくいシリンダー錠を開発し交換を呼び掛け、安全な生活の提供を図っています。錠前をすべて取り替えるのが解決方法としては最適ですが、コストが掛かりすぎるため、シリンダーだけの交換でセキュリティーを確保できます。

 ワンドア・ツーロックにしたり、シリンダー交換をすれば安全を確保できるのでしょうか、侵入を完全に防ぐことができるのでしょうか…。すべてを解決したわけではなく、犯罪を完全に防ぎきることは難しいのです。
 犯罪者がその気になれば、カギが何個付いていようが開けてしまうことは可能ですし、2階のベランダからの侵入や窓ガラスを割って侵入するなど荒っぽい手段もあります。防犯設備と犯罪者たちのイタチゴッコは続く…ということです。

 ハード面も大切ですが、やはりありがたいものは犯罪を防ぐ近所の目ではないでしょうか。近所付き合いというソフトな面も、防犯には大きな役割を担うのです。侵入を狙う犯罪者は人目を気にするため、見慣れない人への簡単なあいさつが犯罪を未然に防ぐケースもあります。

 近代化マンションのようにオートロックを採用し、プライバシーばかりに気をとられると死角が多くなり、いったん部屋の中に入られると何をやっているのか分からなくなり、犯罪には好適な構造と化してしまう恐れもあります。
 特に最近の犯罪では、窃盗目的に侵入した犯罪者が家人がいるのに気付き、一転強盗に変貌してしまうケースも出てきています。侵入を防ぐ錠前も重要ですが、防犯ブザーも効果をあげます。異常を近隣に知らせる手段として、備え付けたいものです。

 一方、会社の事務所荒らしも大胆かつ狂暴になってきました。金庫は、もともと移動しやすいように下部にコロが取り付けてあるため、運ぶには好都合なのです。事務所に金庫を置く位置を確定したら、固定してしまうことが重要となります。これは防犯にはもちろんのこと、地震対策としても大きな効果が得られます。
 またドアをいくら頑丈にしても、ガラス窓を割り侵入するケースも多いのです。ガラス自体を厚くしてもあまり効果はなく、やはり鉄格子で守る方法が最適でしょう。特に現金を取り扱う店舗・事務所などの金庫のある部屋は、細心の注意が必要です。

 静岡県内でのピッキングなどの窃盗被害の発生も年々多くなってきていますが、静岡県警本部は防犯意識を高めるための広報活動や指導を活発に実施し、積極的に被害防止への取り組みを示しています。
 また発生件数に対する検挙率は高く、静岡県内での検挙のほか、静岡県外での検挙も行うなど徹底した取り締まりで静岡県民の生活を守っています。

 「防犯モデルマンション」の普及を目指し、静岡県警の呼び掛けで静岡県防犯協会連合会と静岡県都市開発協会が認定制度の創設に向け検討を始めました。当面は新築分譲マンションが対象となります。
 検討される基準は、「外部から侵入しにくい」「共用玄関は扉でオートロック」「出入り口の見通しを確保」「エレベーター内が見えるよう内部に防犯カメラ・非常連絡装置の設置」「駐車場へ照明設置」「ピッキング対策に向け主錠と補助錠の設置」−などとなっています。
 審査員は一級建築士に依嘱する方針で、書類、現地審査を実施した上で適否を判断し認定、防犯モデルマンションのプレート交付を予定しています。申請は静岡県都市開発協会員に限定せずに、受け付ける方針です。
 モデル認定制の先進地・広島県では、広島県防犯協会と広島県マンション協会が平成11年9月から防犯モデルマンション登録制度の運用をはじめました。反響は大きく、すでに20棟が認定を受け、30棟の申請が出されています。

項 目 基 準
1 マンションの塀および植栽 1 塀および植栽を足場にして、上階の窓やベランダに登れないこと
2 周囲から見通しの良い構造となっていること
2 駐車場・駐輪場 1 駐車場・駐輪場の屋根を足場にして、上階の窓やベランダに登れないこと
2 夜間、雨天時の照明が十分であること
3 出入り者を管理人室から容易に確認できること。または、監視モニターおよび録画機能付き防犯カメラが設置されていること
4 駐車場入り口にシャッターが設置されていること
3 マンションの入り口
エントランスホール
メールコーナー
1 オートロックになっていること
2 出入り者を管理人室から容易に確認できること。または、監視モニターおよび録画機能付き防犯カメラが設置されていること
3 夜間、雨天時の照明が十分であること
4 各室の出入り口
(玄関)
1 主錠は「面付き箱錠」または「彫込み箱錠」を使用していること
2 扉と扉枠の隙間から錠のデッドボトルが見えている場合は、ガードプレートが付けられていること
3 扉にドアガード、ドアスコープ(テレビドアホンを含む)などの防犯金具が付いていること
4 扉および扉枠は丈夫な構造であること
5
(ベランダ・バルコニー・テラスの窓を含む)
1 1階の窓には、補助錠が付いていること
2 サッシおよびサッシ枠は丈夫な構造であること
3 高窓や腰高窓などの人の出入りを伴わない窓には、丈夫な構造の面格子が付いていること
6 ベランダ
(バルコニー・テラスを含む)
1 外部から侵入しにくい構造になっていること
2 ベランダの柱、雨樋、給排水管、冷暖房配管を足場にして、上階の窓やベランダに登れないこと
7 ホールセキュリティー設備 1 共用玄関および管理人室との通話機能付きインターホンが設置されていること
2 非常押しボタンが付いていること
3 テレビ付きインターホンが設置されていること
8 エレベーター 1 エレベーターホールおよびエレベーターの籠内は明るくなっていること
2 管理人室や廊下からエレベーターホールの見通しが良くなっていること。または、監視モニターおよび録画機能付き防犯カメラが設置されていること
3 非常ボタンが設置されていること(できれば2ヶ所以上)
4 非常用インターホンが設置されていること