全国どこにも『神社』がある。原則的に、それは『南』を向いている。しかし『神明さん(アマテラスオオカミ)』のみは、東または西に向いている。これは、祭神のおわす伊勢を拝するためで、伊勢より西は西向き(すなわち東を向いて拝むため)、東のほうは、東向きである。これは、西にあるお伊勢さんを拝するためだ。
◇北はいのちの根源
こうした『例外』を除くと、ほぼ神社は南向きなのである。その理由は、風水の原理から言うと簡単なことである。
北には、命の根源の水(風水では子が象徴する)の方位だからだ。子は、水の気の最高方位なのだ。生命はここから生まれるとするのだ。
江戸の北に日光・二荒山があり、京都の北に鞍馬山があるのもそのためである。日光からは、利根川が流れ、鞍馬からは加茂川が始まる。昔からある町の北には、必ずこうした『水』を祭った処がある。
◇北極星と北斗七星
さらに、中国の思想が導入されるようになると、北の象徴として北極星が信仰の対象となる。北極星は『北辰』ともいわれ、『太乙』(太一とも書く)とも呼ばれる。
その『太乙』は、『北斗七星』をともなう。子供のとき習うあの『ヒシャク星』である。北極星を回る北斗七星の位置が、いわゆる『十二支』になり、月や時間・方位をあらわすのは周知のとおりである。その位置を見て、暦としたのである。
◇伊勢は風水の根源地
この『命の根源』であり、水を意味する『太乙』を拝むのが、神社なのだ。それは伊勢神宮の『外宮』トヨウケノオオカミであり、太陽は『内宮』アマテラスオオカミである。
両者を祭る伊勢は、言葉を換えていうと『日本の風水の中心地』になるわけで、単なる神社のひとつではないのは、このためである。
北斗七星が子の位置(旧暦11月・霜月)である真北にきたときを冬至といい、『一陽来復(福)』として、祝うのは周知のとおりである。
いわば、神社が南向きなのは、北にある北極星(命の根源)に対面するためだからである。日本の神社にお参りすることは、『自分の生命の根源』に会うためでもあるのだ。
静岡県立大学国際関係学部教授 高木 桂蔵 |
メニューに戻る