世間で良く『方位』が言われる。『西の方向に赤い花を生けなさい』とか、『今日は、こちらの方向が吉、こちらは凶』というものである。いろいろと言われているが、『なぜそうなるのか』が説明されていない。
理由は、それを言うと『飯の食いあげ』になるからである。わが「建築ナビ」では、それをここ数回で喜んで教えようというわけである。
◇『五行の相生(そうしょう)』ということ
まず、五行ということを説明しよう。五行とは、天地万物をすべて5つの元素にあてはめる考えである。2500年前の漢代に中国で体系化された。
万物は木・火・土・金・水の5つの元素に分類される。それはまた循環するとしている。例えば、木が燃えると火になる→火は灰(土)となる→土の中から金属が出てくる→金属は冷やすと水を呼ぶ→水は木や草に吸われて木となる→木は燃えて火となる……こういう風に万物は循環していくというわけだ。
◇『五行の相克』ということ
さらに五行には、勝ち負けがある。図を見ていただきたい。まず水を火にかけると火は消える。水は火に勝(克・剋)つわけだ。同様に火は金に克つ…金属は火で溶けるから。また金は木に克つ…金属で木を切れば、容易に切れるから。木は土に克つ…木は土に根をはやしているから。土は水に克つ…土の堤防で水を防いでいるから…とするのである。これを『五行の相克(剋)』とよぶ。
◇『五行の色』ということ
そして、この五行には色があるのだ。木(青)、火(赤)、土(黄)、金(白)、水(黒)。これを五色という。仏教旗になっているのは、周知のとおりである。昔は、字が読める人が少なかったが、これなら簡単に分かる。
◇稲荷の鳥居の赤いわけ
さて、この五行の運用を示そう。稲荷の鳥居が赤く、社殿も赤く塗ってあるのは、この『五行の法則』を利用したからだ。
まず、稲荷は『いねなり』で、稲を実らせる神のこと。土地の神でもある。この『土』の親は、五行の相生でいうと『火』である。火が大きければ、盛んであればあるほど土の力は強くなる…だから、火の色である『赤』を盛んにすれば、土の力が栄えて豊作になるということになるのだ。こうして稲荷の鳥居や社は赤いのである。
ダルマさんが赤いのも、赤が土の親だからである。ダルマの赤が増える→土地が栄える…という方程式、これがすなわち風水の法則なのである。赤飯もこの原理からきていることは、お分かりだろう。
静岡県立大学国際関係学部教授 高木 桂蔵 |
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