建てたい人と建てる会社の『建築ナビ』

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■連載3 耐震偽装の温床はどこだ

 「もちろん直接の責任は、構造計算書を偽造した建築士が負うべき。しかし、他にもまったく責任がないとは言い切れない」。県内の中堅事務所に所属する建築士は、重い口を開く。

 意匠など建築設計を担当する建築士は、構造設計に対して統括する立場にある。しかし「すべてではないが一部の建築士は、統括責任を軽視する傾向があったはず。『構造設計者任せ』にしすぎた構図が、表面的に見えにくい構造に対する甘えを生んでしまったのでは」と持論を展開する。

 一方で、前出の建築士は、建築確認業務を担う自治体や確認検査機関について、少し極端な表現と前置きしつつ「従来の建築確認は、言わば『性善説』に立って審査してきた」点に着目する。

 「『まさか偽造した計算書を申請してくるわけないだろう』という意識のもとでの審査と、『ひよっとして多少のごまかしはあるのでは』と想定し審査するのでは大きく違う」。確実に偽装を見抜くために「多少の時間は要しても『性悪説』に基づき、より厳しい目で審査する姿勢が求められる」という主張だ。

 従来の構造基準における考え方は、構造設計者に大きな裁量が委ねられてきた。しかし、裁量の意味を履き違えて「『法律ギリギリで適合していれば問題ない』と、都合のいいように解釈されるケースがある」と県内のある業界関係者。どうしても「確認申請時には、耐震性能の考え方など設計者の主観的要素が大きく介入してしまう」現状を訴える。

 20日から施行された改正建築基準法では、鉄筋コンクリートの剛性設定や開口部付耐力壁の取り扱いなど、これまで構造設計者に委ねられてきた部分を規定化している。構造基準の設定がより明確になり、各確認機関での構造審査が強化されるのは間違いない。

 善意・悪意問わず、結果として耐震基準に満たない、誤った入力の構造計算書が確認審査を通過する状況を二度と招いてはならない。建築にかかわる者すべてが、「法を順守する」という至って基本的な職業倫理を持つことが、再発防止への第一歩となる。
  <つづく>
<建通新聞・静岡 2007年6月22日付>