建てたい人と建てる会社の『建築ナビ』

  • サイトマップ
  • フレンドリンク

ページ内を移動するためのリンクです。

「財団法人静岡県建築住宅まちづくりセンター」
青山 巖 専務理事にインタビュー

■■ 建築確認・検査業務を行う「指定確認検査機関」について ■■
■■ 建築確認・検査の業務区分 7月から「すべての建築物」に拡大 ■■

 建物や住宅を建てる時、建築基準法などの法令や各種基準に適合しているかどうかの審査が必要になります。「建築確認」と呼ばれるものです。平成10年の建築基準法の改正により、建築確認事務は民間でも行えるようになりました。
 一連の耐震強度偽装事件を受けて、民間で建築確認・検査業務を行うことができる機関「指定確認検査機関」の存在がクローズアップされています。静岡県内で建築確認・検査を行う「財団法人静岡県建築住宅まちづくりセンター」の青山巖専務理事に、「指定確認検査機関」の業務内容や役割、建築確認業務の強化策などをインタビューしました。
【聞き手=建築ナビ事務局・八木規公子】

八木
指定確認機関「財団法人静岡県建築住宅まちづくりセンター」としての役割・業務内容を、お聞かせください。
青山専務理事
財団法人静岡県建築住宅まちづくりセンター 青山 巖 専務理事  建物を建てる場合には、建築基準法にあっているかを確認・検査する手続きが必要です。平成10年までは確認・検査業務ができる人は、行政庁(県・市)だけでした。それですと、時間もかかりますし、短時間で処理をしようとすると公務員の人数を増やす必要も出てきます。そこで、民間でも確認ができるようにと、建築基準法が改正されました。

確認・検査業務

 民間開放するためには、さまざまな要件を備えたところを民間確認検査機関として指定するわけですが、その一つとして、当センターが指定の要件を揃え県知事に認可を申請、指定を受け、12年7月から建築確認・検査の手続き業務を開始しました。行政庁と同じように、設計内容が建築基準法に合っているか審査ができるようになったわけです。

住宅性能評価制度

 また、当センターは 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、国土交通大臣の登録を受けた「登録住宅性能評価機関」です。国から“評価できる機関”として指定を受け、12年10月から住宅性能評価業務を行っています。
 「住宅性能評価制度」は、住宅の性能に関わる項目について、法律の技術的基準に基づいて等級や数値などで評価します。住宅がどのランクにあるかを評価するのですが、構造、省資源・省エネルギー、バリアフリー、高齢者対策などの項目があります。住宅を建てようとする人は、望むランクを設計をする人に依頼してもらいます。排気量、エンジンの大きさや型などを決めていく自動車の仕様と同じです。

住宅性能保証制度

 もう一つ、12年10月から住宅保証機構という国の財団法人から受託を受け、「住宅性能保証制度」の仕事の代わりもしています。この制度は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で定める10年間の保証期間が20年間に延長されます。住宅を建てようとする人は、建築確認とあわせて、保証制度に入りたければ同時に申請ができますので、利便性が高まるわけです。

定期報告事業

 一定規模以上の建物は、設備状況などを定期的に点検し、行政庁に報告することが義務付けられています。当センターは、12年以前は「財団法人静岡県建築安全協会」という組織で、この「建築物の定期報告」という行政庁の業務を受託していました。住宅関係の建築確認・検査業務を開始するのにあたり、名称を改めましたが、定期報告事業は継続しています。以上の4事業が主なものです。
八木
建築確認・検査の業務区分が7月から「すべての建築物」に拡大され、名称の“まちづくり”の意味合いが強まるわけですか。
青山専務理事
 財団法人として、民間とは違った役割を果たしていかなければいけないわけです。住宅関連の制度を抱き合わせで行うことによって、業者の利便性が高まると同時に、建物の安全性が高まります。しかし、それだけではなく、建物を建てていく過程で“住みやすいまちづくり”の役に立っていきたい、それが財団法人としての役割だと考えて名称に入れてあります。

業務範囲枠の撤廃 すべての建築物で確認・検査

 “まち”というものは、一定規模以下の建物だけではありません。建築物すべてが相互に連動して“まちづくり”ができているわけですから、その点からもセンターとしての長年の念願でもありました。建築確認という行為は、建てようとする人に対しても、設計された人に対しても責任を負うということです。審査をするわけですから。当然そこには、審査する人の体制という問題が出てきます。責任を持てる体制にするには時間がかかると判断し、500以下の住宅からスタートし、17年4月から2000以下の建築物まで拡大しました。その後も手順・体制を整え、今回の業務範囲枠の撤廃に至りました。
八木
審査の体制や基盤の強化策として具体的には。
青山専務理事
 17年度の「2000以下の建築物まで拡大」時に、業務量増加に伴い審査能力を高めるため、前年には静岡市にお願いをし、職員を3名派遣し研修を行ってきました。

構造審査 万全の体制で

 また、耐震強度偽装事件をきっかけに、構造専門職員を3人採用し、構造の審査にあたっています。そのうち2人は、パソコンに頼らず「手計算」で構造計算に長年携わったベテラン職員であり、構造計算の理屈を熟知しています。図面を広げただけで、構造上の問題点などが一目で分かります。別の視点での的確な構造チェックといいますか、手計算世代の経験とコンピューター世代の知識を織り交ぜて審査しています。
 事件後は、申請者や施主からも問い合わせがあります。審査内容などに対する疑問や不安には、きちんとお答えしています。
八木
地元の財団としての役割、そして一般への認識に向けての活動をお聞かせください。
青山専務理事
インタビューの様子  財団の性格として利益は還元します。ですから、手数料はどこよりも安い設定をしています。そして県内の建築確認検査のシェア7割超えていますが、103人の組織のうち1級建築士は68人、建築確認ができる資格者は58人います。これは全国でもトップクラスだと思います。多くの人材がいるということは、検査希望日に応えられる、審査を待たせることなく行えるということです。

利便性や建築士の資質向上も“財団”の役割

 また、申請代理者(設計事務所や建築士)を対象に、各団体とも調整を図りながら、無料講習を頻繁に行っています。建築士の資質を高めてもらうためのものですが、建築士の資質が高まれば、ひいては一般の方の利便性が高まることに繋がると考えます。それも財団法人の役割だと認識しています。

建築・住宅相談窓口 開設に向けて

 建築基準法というのは、守るべき最低限の法律の基準ですから、単に「確認を取ればいい」というものではなく、構造の規定にしても、設計者には施主の希望を聞くよう伝えています。それが、住宅性能評価制度であり、住宅性能保証に繋がるわけです。これからは、申請代理者だけでなく、一般の方を対象とした建築相談・住宅相談窓口を静岡・沼津・浜松に常設し、平日ではなく土日に開けるようなかたちを作っていきたいと考えています。